降らす、岬を越えて
相田 九龍




不可逆な時間を恨む、物置の隅にある
四角い箱に心臓を入れた
ことを忘れた、欠如した感覚の数える
時間の経過が雨をポロポロと、降らす
岬を越えていく、嘴の長い白い鳥の
羽が一枚一枚抜けて、感覚のない痛みにも
当然のよう赤くなってゆく皮膚が露見して
それでも私の腕に胸に、血は流れない
汚れた地平をとぼとぼと歩けば
あの人の微笑む顔は静止したまま
より、明確に浮かぶ
今あなたは
どんなお顔をしているのでしょうか
暗闇の中でしくしくしくと
鼓動に応じて痛む胸が透けて
弛たって、張り裂け
引き摺って、刺さり
その痛みでより明確さを増し
無限の距離を現しながら
関係は、一方的になり続けていく


自由詩 降らす、岬を越えて Copyright 相田 九龍 2009-12-08 21:50:38
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