駄菓子屋のソネット
あ。

駄菓子屋の側に置かれた自動販売機は
存在を知ったときからもうおんぼろで
お金を入れてボタンを押しても
蹴っても叩いても何も出てこなかった


お店を切り盛りしていた女主人は
存在を知ったときからもうお婆ちゃんで
いつも食パンを焼いては機械で切り分け
どのお菓子よりも丁寧に並べていた


あれから二十年以上のとしつきが流れ
自動販売機は姿を消してしまった
駄菓子屋のお婆ちゃんは御隠居生活で
それでもかつて店だったところに座っている


今、胸を覆っているものの名前を
わたしは、知らない


自由詩 駄菓子屋のソネット Copyright あ。 2009-12-08 19:59:28縦
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