中2の冬
嘘而

真っ暗な道を歩く
家に帰るために歩く
息が白くて
寒くて
視力がだんだんおちてきたせいで
星は見えない


赤いマフラーをつけた
上級生数人が
わたしの横を通り過ぎる
足が細くて、カーディガンが似合ってて、
羨ましいと
思ったり、思わなかったり


今日1日のことを振り返る
帰ったら宿題をしなきゃ
ああ、でも
明日は土曜日だから
日曜日の夜にまとめてやろう
そんなことを考える


つい最近聴いた
お気に入りの歌を
小さな声で歌いながら
帰る
とちゅう、歌詞を忘れてしまって
記憶力のない自分に腹が立つ


大きな交差点にでて
信号が青くなるのを待つ
ありきたりな時間
ありきたりな時間なのだ
毎日同じことの繰り返し
毎日同じことの繰り返しなのだ


泣きたくなる自分を慰めながら
横断歩道をわたる
ほそい道にでる
大きなトラックが
ほそい道に走ってくる
ここでこのトラックにひかれて
わたしが死んでしまったら
いったい何人の人が
泣いてくれるのだろうか、と
本当に
本当に意味のないことを考えたりする


トラックをよけて
わたしは再び歩き出す
家に帰るために
歩く
トラックが通り過ぎた後
臭い匂いが、わたしを包む


排気ガス
排気ガスの匂いだ
これが
人間の匂いなのだろうか
もしそうだとしたら
ちょっと悲しいなと、思ったりもした



ちらりと見た今日の夕暮れは
目が潰れるほど
わたしが消えてしまうほど
世界が笑ってしまうほど
ただ単純に、純粋に、
美しかった。


自由詩 中2の冬 Copyright 嘘而 2009-12-05 11:07:16
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