消えないあなた
小川 葉


今日は
長谷川さんが軽い

軽くなった長谷川さんを
おんぶして
仕事に出かける

長谷川さん
ここで休んでいてね
と言って
缶コーヒーの蓋を開けると
そこから山内さんが
顔を出している

長谷川さんは
居眠り中
いびきも軽くなった
長谷川さんを
山内さんはじっと見ている

昼休み
コンビニで
カップラーメンとおにぎりを買う
めずらしそうに
長谷川さんと山内さんが
食べる様子を見ている

長谷川さんと
山内さんが
いなかった頃は
コンビニなんてなかったから
そういうのが
珍しいのかもしれない

帰り道
昨日は長谷川さんだけだったのに
今夜は山内さんも
背負っている

明日はまた
誰が増えているのか
消えているのかは知らないけれど
思えば思うほどに
わたしは生きているのだと
実感している


自由詩 消えないあなた Copyright 小川 葉 2009-11-28 01:51:54
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