わたしが変化していた頃
あ。

わたしがうさぎだった頃
この世は赤いもやがかかっていた
花びら一枚にも手が届かないので
うつむいてありの行列を眺めるしかなかった


わたしがひなどりだった頃
飛び立ちたくて仕方がなかった
あの子が欲しくてたまらないのに
小さな巣箱からただ鳴くばかり


わたしたち、繰り返し変わり続けている
いつかどこかの星に到着するかもしれない
豊かな土壌の仕組みを覗き見出来るかもしれない
いや、もしかしたら今が最後で
もう二度と変わることがないかもしれない


涙のあとに瞳を赤く腫らしてしまうのは
うさぎだった頃のなごり
ついばむような口づけを好むのは
ひなどりだった頃のなごり


きみのすき間からこぼれおちたため息は
体毛の退化した肌に巻きついてきて
体毛の進化した髪をそよがせてきて
溺れないようにかき分けながら酸素を探す


左腕に目を落とすと
小さなうろこが一枚生えていた
それを剥がすべきかそのままにしておくべきか
わたしはいつまでも迷っていた


遠い昔の思い出話
今の姿をあの頃のきみが見たら
一体なんと言うんでしょうね


自由詩 わたしが変化していた頃 Copyright あ。 2009-11-25 10:09:44
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