わたしが変化していた頃
あ。
わたしがうさぎだった頃
この世は赤いもやがかかっていた
花びら一枚にも手が届かないので
うつむいてありの行列を眺めるしかなかった
わたしがひなどりだった頃
飛び立ちたくて仕方がなかった
あの子が欲しくてたまらないのに
小さな巣箱からただ鳴くばかり
わたしたち、繰り返し変わり続けている
いつかどこかの星に到着するかもしれない
豊かな土壌の仕組みを覗き見出来るかもしれない
いや、もしかしたら今が最後で
もう二度と変わることがないかもしれない
涙のあとに瞳を赤く腫らしてしまうのは
うさぎだった頃のなごり
ついばむような口づけを好むのは
ひなどりだった頃のなごり
きみのすき間からこぼれおちたため息は
体毛の退化した肌に巻きついてきて
体毛の進化した髪をそよがせてきて
溺れないようにかき分けながら酸素を探す
左腕に目を落とすと
小さなうろこが一枚生えていた
それを剥がすべきかそのままにしておくべきか
わたしはいつまでも迷っていた
遠い昔の思い出話
今の姿をあの頃のきみが見たら
一体なんと言うんでしょうね