十人の盗賊
たもつ
一人目の盗賊は目を瞑った
二人目の盗賊は葉の匂いをかいだ
三人目の盗賊は百本の口紅を盗んだ後アル中の妻に口紅を一本買って帰った
四人目の盗賊は人形の頭を終日かじり続けた
五人目の盗賊はあと少しだった
六人目の盗賊は海賊に転職するために履歴書を書く練習をしている
七人目の盗賊は偏頭痛がひどかったので八人目の盗賊の右肩を撃った
八人目の盗賊は外国のコメディーを見ながら九人目の盗賊の左大腿骨を撃った
九人目の盗賊は病院に行く途中、道に落ちていた鳥かごにつまずいて死んだ
十人目の盗賊は理由を知らされることなく今日初めて生まれた
初めてみる世界は美しく
そして肌寒かった
やがて温かくなるといつしかそのことは忘れ
新しい経験だけが記憶として積み重ねられた