無街
木立 悟





はざまから土
降りおりる銀
曲がるたびに
冬を巻く道


緑の雨と肋骨の森
作りかけのまま棄てられた街
埋め立て地の午後
低い低い音のつらなり


熱を持たない
火柱の音像
海へ下る坂
誰も居ぬ坂


原の前 林の前で道は途切れる
川の前 野の前
すべてがすべてに立ち止まり
緑に緑にひび割れている


無い街が
無い街のまま在り
朝昼夜を浴びている
ふくらみ 縮み
灰を放つ


雨がすぎ 雪がすぎ
枠だけが迷路のように残り
荒地にも空地にもなれずに
緑をはじきつづけている


川岸を覆う枝葉が
無いものばかりを指し示し
川のかたちを投げ出しながら
午後の音を乱してゆく


けして雪のつもらない溝
はじめの息の流れる溝に
花や葉や実は澱みつづけ
分ける森 分けない境になってゆく


日々の記述は一巡し
古傷と 新たな傷とがやがて重なり
新たな響きの道として
嘆くものらを導いてゆく


帰る途もなくわたしは帰る
鉄の輪を負い 火を浴びながら
水や空に置き忘れた羽
はじめて聴くものに耳かたむけながら





















自由詩 無街 Copyright 木立 悟 2009-11-21 23:08:09
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