lily,my girl,so sweet,so sweet
丘野 こ鳩

ねえ、どこまでだって
飛んで行けそうだから
あなたに乗って
あなたを漕いで
どこまでだって いけそう
ずぶぬれに溶けだして
海となって、動こう
くじらの群れがよこぎっていく
走馬灯のなかを
虹色のあぶくで、呼吸も 
ままならないような
そんな光景をみせて
どんな夜も
どんな朝も
とうていおよばない
どんな悪魔も
どんな祝福も
叫びも 呪いも
驚きも 眩暈も
おいつけないような
だって宇宙でしょう
宇宙のように あたりまえに
覆いかぶさり
百年生きたって たどりつけない
圧倒的な 定義でしょう、あなたは
わたしを溶かして
わたしをなくして
だれもおよばないところへ
どの体の
肉体の
ないところまで
つれていくんでしょう
ねえ、どこまでだって
きらめいて、すべての星が
すべての、星の、
放つ光が
ひとつ残らず あなたの 一部、だから
一足飛びで 個を 越えて
私を越えて
生命を越えて
花咲くでしょう
太陽ほどの大きな惑星が
咲き乱れるでしょう
そうして、ながれて、いくでしょう
神話の一つ目の怪物の、大きな心臓が、流し込んでいる
濁流のような血脈
煮え滾り、沸き立つでしょう
どの季節にも
そうして、散々に降ってくる
火の粉と粉雪が
産まれずに死んでいく命の種を慰める
おはよう おはよう ありがとう さよなら
ひらく ひらく 手のひらのように
生まれたての海亀の眼が
薄紫に霞む世界が
ひらく ひらく ひらいて みだれ
すべての窓のカーテンが
ゆらぐ 風のないまま
どの命も吹かれて
引き潮のように
ながされていく
煮え立つように
綿埃のように
ながれていく
ああ
あなたに乗って
あなたに乗って
ねえ
あなたがわたしの概念、願い
いのり
どこまでだって (いって) いって
ひろがる
宇宙よりも外へ
どんな暗闇も 
瞬きも
時間を 順に 組み立て
死にかけの思い出を並べ
人差指で弾く
ドミノみたいに崩れるのを
笑っている
笑い合って、見ている
ああ ほんとうに おはよう
なにもかもがあなた
わたしはそれに包まれ、流され、上に跨って
漕ぐ、漕ぐ、漕ぐ、漕ぎだすの
いけるところまで
手ぶらで
苦く、苦く
笑いながら
砂漠と海とを越える
朝と夕べを越える
はう、はう、はおう、ほー ほう ほう、ほ、ほ、は
は、は、は、ほ、ひ、はう、はう、ほう
肺の中で、呼吸している、わたしが、
呼吸している うえで あなたの、うえで あなたの、うえで あなたの、うえで あなたの、
ああ
なたの、あたたかい 





自由詩 lily,my girl,so sweet,so sweet Copyright 丘野 こ鳩 2009-11-21 22:22:40
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