マザーシップ
ogawa hana
あたしは都会に行ったことがない
友達のえりあしは屈託がなく、溜息は山並みに同化する
おんぼろな校舎の3階からは特に何も見えない
はるか彼方に水平線が5cmほど臨めるが、
手垢だらけの教室内のほうがまだ綺麗なものがあったりする
あたしはおつむが弱いらしく
夜空を見上げてもオリオン座しか指せない
東京ではオリオン座すらも見えないらしいと聞いたから、
東京に行けばあたしの仲間がいるのかも、と
勝手に思っていたが、どうやら違うようだ。
あたしは孤独をわかってないらしい
あたしが思う孤独を、友達は否定する
「あんたは幸せ。孤独なんかじゃないよ」
幸せと孤独とは別物だと思ったんだけど、うまく説明出来なくて、やめた。
月面着陸のときの白黒の映像をみて、
命綱を、臍の緒みたく感じたんだった。
電線が張り巡らされてくたびに
拘束された空を気の毒に思ったけど
実は逆だったりした
あたしの電卓は3.14をはじきつづけ
この果てもない球体に閉じ込める
あたしは夢を見たことがない
けったいな輩が触媒を差し出して
あたしの寿命を縮めようとする
七夕には短冊が千切れ舞い飛び
ブラウン管はせめて夢を閉じ込たまま絶滅して欲しい
あたしは都会に行ったことはないが、
あたしの住む町はけして田舎ではない
でかいモグラがガタンゴトン言わせて
今日もあたしたちの生命線を繋ぎながら
(そして寸断しながら)
縦横無尽に掘り進めていく