二人の戦おうとする闇
番田
誰もいない、誰ひとりとしてすらもいない風が吹いている。僕は衝動を抑えながら、そんなふうにただ、流れていくことを続けた。指にあるのはただ一本のマッチ、すべての踏みだそうとする方向もないままに、立ち止まることもないままに、答え、となることもないままだった。森があり、林があり、平板になったかのような海が突きでた浜辺からは広がっていこうとしていた。大西洋の鼻先にはアメリカがあり、手をのばす者には金銀財宝が存在することだろう。音楽はもうかすかなものではなかった。鳥のささやきだけがサラリーマンのベッドタウンのこのどこかへと、どこかですらない音響となっていく感じがした。
そんな感覚がしていた。友達はゲーム機の電源をつまもうとしては、どこへ向かえるわけでもない人生についてを大変嘆いていたようだった。蓋を指の先にすると、CDは熱をはらんだままのような大回転を、しようとしている。ベッドのところに僕の友達であろう人間はもたれて、灰色の煙といったものを白くする。僕らはまだ子供だった。闇にも足をのばしたことはあるし、そういった挙動にも慣れていた。最近ではコカインを体じゅうに向かって、出しているし、情報のようなものによって覚醒に関する思いのようなものも幾分身につけようとしてすらいた。