蝌蚪
木屋 亞万
大腸と小腸の図を見ると
蛙の卵を思い出す
むにゅむにゅむにゅりと蠢くような
細くて長い透明うんこの中に
いくつものタピオカ
多分ねじればソーセージ
ゆでればカリッと言うのかね
蛙は何歳から鳴くのだ?
生まれてすぐ泣かないのか
人間よりダメな生き物だね
うんこから生まれるのだものね
人間はうんこの穴に近い穴から生まれはしても
うんこみたいなものからは生まれやしない
それに生まれてすぐに泣くのだよ
蛙は幼少時に泣くことを我慢しすぎたために
大人になって抑圧していたものが弾けてしまって
壊れたように泣いてしまうのではないかな
うれしくも悲しくもないのに
自分の愛しい人が側にいるだけで涙が止まらない
涙のわけを尋ねられて
自分でもわからないのだと答えるだけで
さらに涙が溢れ出す
そして衝動を抑えられずに子を孕むのだ
蛙は両生類なのだそうだな
男も女もないのか?
両性類とはまた違うのか
生殖は有性なのだな一人前に
あれは鳴きながら泣いておるのか
馬鹿みたいに笑っているようにも聞こえるが
笑い泣きかもしれんし、泣き笑いでもあるかもしれない
蛙とすべてまとめていってしまうと
すべてがそうであるように聞こえるが
色々な蛙があって
それぞれ泣きと笑いの按配は
個体ごとに違いがあるのかもしれないな
蛙が二足で歩く絵を昔見たことがあるが
あれは実際にあったことなのか
あの筆の動きは幻を書いているようには思えない
ためらいなき運筆であるがゆえに
蛙が着物を纏って歩いている姿を夢に見るようになってしまった
彼らの着物には判子でついたような文字模様がついておって
それを見ると壊れたように声を出さずにはおれんのだ
嗚咽をともない涙がとめどなく流れるときもあれば
腹がよじれるくらいに小刻みに笑い続けることもある
鳴くということはこういうことだと呪いをかけられているのだ
それから最近うんこが寒天みたいに透けるようになって
消化不良を起こしておるのか
黒い球体がうんこに残ったままだ
小豆みたいに粒粒が埋め込まれておるのだ
むにゅりむにゅりと粒が痙攣しているようにも見える
そのため最近は心太や水無月、蒟蒻が喉を通らないのだ
手は痩せこけ、腹は中年のように太り、足も太くなり土偶のようだ
満腹でもないのにゲップの発作がやまず
拍子の早い吃逆のように喉が鳴るのだ
肺は絶え間なく痙攣していて息をするのが苦しい
おたまじゃくしの踊り食いなど、もうしないから
許しておくれ、と一体誰に謝ればいい