上京A
F (from send-ence)

青空に戦闘機が飛び交うようになってしばらく
故郷をなくした
自分ん家はもちろん
ピンポンダッシュしてまわった近所の家も
鬼ごっこをした公園も
灰の舞う黒い大地に変わってた

国民の激励と国旗に見送られて
また若者が死に触れにいくんだ

小学校2年生のときの七夕
短冊に書いた
「このまま小学生でいられますように」
親が見ると悲しい顔をする気がして
夜中にこっそり笹に吊るした

昼夜を問わず爆撃音が鳴り響くようになってからずっと
太陽は姿を消した
「大人になったらなりたい職業ランキング」は
もうどうでもよくなって
若者達は一本の線を列をなして歩いてく

どこからでも見える大きな虹が空に架かり
争いは去り 時は流れた

それでもなお国民の期待を一身に背負って
近い将来自分の親の面倒も見れるかさえ不安なこの若者達に
世の中のおじいちゃん おばあちゃん
はたまた今は現役バリバリの中年層のそれぞれの明日は託された

借金に苦しむ国の為に
賛成多数でタバコ税は格段に引き上げられ
国を愛し 少しでも役に立てばと願う貴重な若者達は
こぞってタバコを吸うようになり 愛ゆえに自らの命を縮めることとなった

平均127分と言われる通勤時間が無駄だと考えた時の首相は
全ての職業、仕事のことごとくの在宅勤務化、オートメーション化を推進し
浮いた時間でいかに税金を払わせるかに精を出している

なんかもう俺ら いらなくね?

地方から上京してくることにも
もはや意味はなくなり
若者は全国に散らばり
結果として選挙の際の一票の格差がなくなったってさ

世のご老人方!
残念ながら若者達は背負うべきあなた達2人には見向きもせず
今日もトイレで日常のしがらみを
アルコールで誤魔化しながら吐き出しています
今朝部屋のカギをちゃんと閉めたかどうかも忘れてしまうほどに


自由詩 上京A Copyright F (from send-ence) 2004-09-18 01:34:58
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