痩せた海
金井省悟

夕暮に

放射線が

ジグザグに

切り付けにやってくるんだ




赤いビル

灰色カビた

臭いのする

壁、壁が息苦しいな




それが頭重くして

それが目玉重くして

でも手もつけなくて

靴もぼろぼろで




おいらの中の魚は逃げた

でも塩水はおいらのもので

いつまでも流れてるつもりだった

つもりだった




あることすべて!

言葉ごと!

臭く白けた波に!

溶けてった!




ああ、俺を見てくれよ

痩せっぽちな海!

何か言えよ






誰の声も

届かない

時間が来て

おいらと海は

突っ伏した




砂をかぶって

子供みたいに

頭の隅で

水を汲もうとしてた




おいらの中で咲いてた金属

でも塩と憂さ晴らしの中で

青く錆びて

果てた




ないことすべて!

言葉ごと!

午前4時!

情景と消える!

融ける!




ああ、俺を見てくれよ!

痩せっぽちな海!

何か言えよ


自由詩 痩せた海 Copyright 金井省悟 2009-11-08 18:40:25
notebook Home