終わる世界
e.mei
(この世界にうまれなかったすべての記号たちに
琥珀色した光りが届いたなら――)
/星が瞬きも忘れて
/死を視ている
世界の空が薄い琥珀のように潤み始めた頃には残されたのは
僕たちだけだった
青白く光る夜の岸に白鳥がとまる
静かな人の祈りの歌が聴こえてくるまでには僕も死ななければならないのだと僕は知っている
蠍の火に焼かれて
この夜はふけるばかりで
太陽の姿は久しくみてない
/
みんな何処へゆくのだろう
僕には知らないことが多すぎる
日々は泡のように消えてゆく
僕と云う記号を遺して
消滅を繰り返してゆく
/
僕は雨の降る音が屋根を打つ南通りで白い犬の死体を見つけた
君は濡れた唇から僕の空っぽのお腹に向かって言葉を投げかける
窓のない部屋に隠れている少女の名前
雨の日に禁止された独立は星の瞬きと共に消えてしまった
春の雪を拾った白い犬はこの世界をすくうためにここで
死体をさらしているのだろう
君という記号が上がったり下がったりしている理由を僕は知らない
けど僕という記号とならんだ時には写真を一枚撮らせてくれないか
誰も知らない世界の終わりの
写真
(青い記号は鳥になって
空低く飛んでいってしまった)
あの日君は何もない世界で唯一の記号だった
そこに僕はいない
あれからそこには君ではない誰かが訪れたのだろうか
いつの日にか
今日という記号の終わりには琥珀色した光りが降る
夜に流れていく青い鳥
窓のない部屋
風のない日に禁止された独立の意味
今日も永遠が永遠に終わらないかくれんぼをしているなら
早く終われよ
世界