冬ごもり
乱太郎

 
コートを着たまま
(冬ごもりしていた)
見せかけの夏
蝉の鳴き声が死んでいた

都会の片隅で夏の亡霊と戯れるが
酔いどれの快楽だけが紅潮して
海辺を闊歩していた
煌めく夢が泳ぐことはなかった

コートを着たまま
(冬ごもりしていた)
見せかけの夏
僕の死体を見つけたか

干からびた指
血流のない静脈
伸縮しない水晶体
平凡な日常にこびりつき
ため息さえうな垂れて乾燥してしまっていた

コートを着たまま
(冬ごもりしていた)
見せかけの夏
地中に埋もれていく

置き去りにされて
火葬にされることもなく
僕の哭き声は
まもなく
鈴虫に食べられるだろう


晩夏が過ぎ
空が笑う


自由詩 冬ごもり Copyright 乱太郎 2009-11-03 13:51:23
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