軽トラ家族
朧月

軽トラックの後ろから
眺めたあなたの姿が
あまりに女だったから
私はこわくなった
へだてたガラスを殴って
振り向かせたかったけど
バックミラーで私の顔を見られたくなかったから
寝転んだ

真っ暗な空にケモノが横切っていった
軽トラックは走る 夜の森を

チチオヤってなんだっけと
ふと考えてみる
生まれてからこの肌は
感じたことあっただろうかと

ハハオヤは確かにいたっけ
痛みをもって
知っていた
あのガラスの向こうの顔をもってたはず

両親ってつぶやいてみる
ざあっと
風がふいた

横揺れする軽トラックが
がたんと停まって

それぞれが降り立つ
女になった母と父になった男と
荷台に寝ていた娘の私が



自由詩 軽トラ家族 Copyright 朧月 2009-11-02 14:40:08
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