テナントの空き箱
中原 那由多

眠れない夜はどうしようもなく
つまらないことばかり考えている
暗闇の微かな声を聞きながら
雑念の海を泳いでいれば
やがて疲れ果てては沈んでゆく

その頃、星たちはすれ違っている


門灯の白い明かりは
窓枠に切り取られて壁に張り付く
その左上をぼんやり眺めた後
その方向へ寝返り打った
殺風景な空気を吸い込み
身体の中さえ空白になってゆく


あの心はまだ生きている
パズルの隙間でおとなしく
独りオセロをしているような
笑えない作業の繰り返し

宴を楽しむ隣人たちは
私の平熱を知るわけもない


無情な思いに入り浸り
知らない部屋だと錯覚する
目の前に在るものたちは
おそらく私のためにあるらしいが
無言で哲学を指差していた



自由詩 テナントの空き箱 Copyright 中原 那由多 2009-10-26 20:45:30
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