入院半径2メートル
umineko

お見舞いの花が光を指して咲く 私の代わりに呼吸をしつつ

牛乳と着替えと洗面歯ブラシが お先にどうぞと譲り合う朝

薄い壁一枚隔てて悲しみと 希望の声で幼子が泣く

先輩ここめっちゃなじんでいますねと 喜ぶべきか悲しむべきか

欲望をまるで無視して配られる 食事言われるままにかきこむ

窓の外生活がある 遮断機が規則正しくまた降りていく

朝なればヒーロー戦隊悩み深く 何故にイケメン何故に解決

カーテンの格子模様にモンドリアンふと思い出す我の退屈

「点滴がなんか止まった気がします」腕をねじれば落ち始めるも

音楽は気持ち高めるものでなく寄り添うものだと知った今なら 

入院の半径たった2メートル 私が私でありますように


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短歌 入院半径2メートル Copyright umineko 2009-10-26 10:38:01
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