耳だけが
kauzak

子供たちを寝かしつけて
朦朧とした頭を抱えて

ただジュースを飲みたいがために
サンダルを突っかけて外に出る

雨上がりの真夜中
起き抜けの身体はまだ夢の中

視界は頼りなげで
僕を包み込む夜にも現実感がない

ただ聴覚だけが冴えている

サンダルを引きずる足音
夜に匂い立つ虫の音

足取り重く駆け抜ける通勤電車
地下トンネルから顔をだす貨物列車

こんな時間に不釣り合いな
優しげな親子の会話さえも
小さな風呂場の窓から漏れてくる

乾いた音を残し
ジュースを吐き出す自販機

未だ夢の中をさまよう身体を
楽しみながら
ジュースを片手に空を見上げる

にじむ月が綺麗だ


自由詩 耳だけが Copyright kauzak 2009-10-17 23:47:24
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