芳香
あ。

雨上がりの濡れた空気に
しっとり染み込む芳香は
垣根の向こうの金木犀


乾き始めたアスファルトに
規則正しくむちを打つのは
子どもが回す赤いなわとび


吸い込みすぎて重たくなった空気を
赤いなわがかき回す
かわいいかわいい橙の花びらが
ふるふるふると小刻みに揺れる


縦も横もごちゃまぜになって
此処が何次元なのかも分からなくなって
余りにも濃密な芳香に酔っているのか
風邪気味でぼんやりとしているせいか


夢の中に出てくる美人は
こんな香水をつけていたように思う
作られた香りでもないのに
どうして艶を感じてしまうのか


今わたしに出来ることは
風邪薬を飲んで布団にまるまって
種類のわからない熱が下がるのを待つだけだ


同じ夢を見ることはわかっていても


自由詩 芳香 Copyright あ。 2009-10-17 16:09:07
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