「泥色の陽溜まり」
Leaf
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群れから逸れた独りぼっちのちっちゃな猿を見たんだろう
無花果の果肉を齧る時、血の匂いを懐かしく想えばいい
もう既に朽ち果てた枯れ葉が寄せる路側帯の吹き溜まり
あの場所にもう一度行ってみたい
それがどんな事かと無性に掻き毟りたくなる衝動に駆られ
檻の内側でソファに腰掛ける熊猫に似た気持ちで
顰め面、濁った朝日を浴びたら
そこは赤茶色の陽溜まり
でも沈丁花の花咲く湖畔の傍を歩く人たちの
優しげな笑顔にそれとなく支えられているんだね
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群れから逸れた独りぼっちのちっちゃな猿を見たんだろう
アーミーショップの二階の窓から手を振っている
人混みに紛れてもサラマンダーみたく上空で
点で照準を合わせるスナイパーに同情してみたくなる
あの場所にもう一度行ってみたい
それがどんな事かと無性に掻き毟りたくなる衝動に駆られ
赤紫色の人溜まりに見えるサングラスの気持ちで
くすんだ西日にすらそっぽ向かれたら
それはもう泥色の陽溜まり
でも窓に揺れてしゃがんだ太陽の欠けた頬を撫でる人たちの
優しげな笑顔にさり気なく支えられているんだね