現はさみし
空都

不思議な夢を見た。

夜の話らしかった。

なんだか良く解らない人達と
なんだか良く解らない道を歩いていくと
ぼんやりと耀く畑がある。

近づいていくと耀きの正体は
大きな水晶だと判った。

私の脚くらいの太さのある大きな水晶が
ふんわりと柔らかな畑の土の中から
頭を出しているのだ。

何の為に水晶が埋まっているのだろう、と
私がつぶやくと
良く解らない人達の中の一人が
『なんでも、独特なこの土の匂いと、内側から光る特殊な水晶が
 化学変化をおこして、それはそれは美味しい野菜にしてくれるらしい』
と、訳知り顔で教えてくれた。

水晶を良く観察しようと、水晶の周りを歩いていると
私の後ろからぞろぞろと大勢ついてきて輪になった。

何をしているのですか、と尋ねると
『踊りを待っているのです』
と言った。

私はお腹が痛いので踊れません、と言うと
『どうぞ、ご自由に』と言われた。

私が輪の中から抜けるとすぐ、踊りは始まった。
踊っている人達は、歌をうたったり口笛を吹いたりした。
とても楽しそうだったが、私の入る場所は
もう、どこにも無かった。

仮病を使ったことを後悔した。


目が覚めるとまだ夜中だった。


朝になって一人で散歩をしていると
夢で見た畑に出くわした。

もちろん水晶はどこにも無かった。


自由詩 現はさみし Copyright 空都 2009-10-13 17:31:59
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