祖父の白百合
朽木 裕

夏の宵に火をくべて
お帰りなさい お帰りなさい おじいちゃん
帰るうちはここだよ 間違えないでね

大好きなおじいちゃんは私が3つのとき亡くなった
お盆に亡くなったからおじいちゃんは大変だっただろう
天国へ行った矢先に神様から
お盆になったので住んでいた家へ帰りなさいと云われ
とても複雑な気持ちで帰ってきたのだろうな

もう23年経ちました

生家へ帰るたび墓前へ赴くたび
やたらめったら詳しい近況報告をするので
実は親戚一同の誰よりも私に詳しい筈です

おじいちゃん 私は元気だよ
これからも見守っていてね

親戚の集いに庭から頭を垂れる白百合が一輪

百年の孤独みたいだなぁ、という感想を持った私は
一応文学少女で通っているのだけれど

あれはきっと きっとおじいちゃんだと思うんだ

ひょろりと背の高いところも
清廉潔白な凛とした姿も
控えめに でも輪に入りたそうに風に揺れている

おじいちゃん おじいちゃん
お帰りなさい お帰りなさい


自由詩 祖父の白百合 Copyright 朽木 裕 2009-10-11 01:10:06
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