洪水警報発令
智哉

増水した川を見ようって出かけたドライブ
山から下る道で大きな鹿を見た
まるで長老みたいな顔で
大きな大きな角を持ち
僕らの事なんて気にも留めずに
通り過ぎる車を越えて遠くを見つめていた
川はやはり水嵩が高く
河幅がいつもよりもはるかに広かった
泥の匂い、濁流の音
かき消されるままに僕は君を呼び止めた
振り返る君
ポケットに隠した右手を差し出す僕
小さな小包み
驚く君の左手の薬指
やっとダイヤを飾ることができた

初めて見せてくれた表情
増水し洪水になった君の瞳
水温は27度を越え、台風が僕の胸をさらった


自由詩 洪水警報発令 Copyright 智哉 2009-10-08 23:32:51
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