金魚
葛西曹達

ただ本当のことが知りたくて
でもそれがわかったからって
何かしたいわけじゃなくて

結局なんのために
知りたいのかわからない

名付けた金魚が
身を賭してまで
伝えたかったことって
一体なんだったんだろう

気づかずに僕はだらだらと
捨ても拾いもしない毎日を
ただぼんやり過ごしてきただけ

恐ろしく静かな日常は
底無し沼のようにじわじわと
ちっぽけな体を飲み込んでいく

抜け出せないのか?
這い上がりたいのか?

きっと誰かが
手をさしのべてくれると
甘く思ってたんだ
自分から声も出さずに

本当は
本当のことを知るのが怖かっただけ

味気ないものだったらどうしよう
風が吹いたら崩れそうな
儚いものだったらどうしよう

「変わらなきゃ」
その声がプレッシャーになって
怖じ気づいて萎縮して

「もし」「たら」「れば」が
頭のなかをぐるぐる回り
始めの一歩を食い止める

いてもたってもいられなくなって
思わず叫んでしまった

今思えば
これが始めの一歩だったんだ

名付けた金魚は
身を賭す前に
何を思ったんだろう

知りたかったことは
そういうことなのかもしれない


自由詩 金魚 Copyright 葛西曹達 2009-10-05 23:19:09
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