箱庭
hinoa

検索エンジンの会社の
小さな白いバンが
都市の毛細な通路を
縫うように走るのは
世界がほろぶ物語の
せつない伏線だろうか

誰も見なくなったネットに
きのうの生活が
褪せた色にかためられて
ひっそりとのこされる
写真のパースがすこし
空に向かって引きつれている

日本、の
ここに、いたんだ
渋滞している自動車たち
押し黙った窓の奥
日の光、影
顔を消された人々

親指で押さえられる大きさ
島だらけの国
張り巡らされた電波
知り合いの知り合いに
隠してつける日記
顔文字と絵文字

それは遊び場だった、
大きな賭場だった
誰もそれを知らない
平和な場所だった
誰かは静かに狂って
忘れてね、と呟いた

それでもそうできない
強い強い思いが
この世界をまだ生かしている
そうしてわたしたちは
死んでもよいはずなのに
誰かの夢の中をまだ生きている


自由詩 箱庭 Copyright hinoa 2009-10-04 23:42:38
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