赤い羽音共同募金 
服部 剛

「 赤イ羽根共同募金ノ御協力、オ願イイタシマス 」 
後輩ふたりを左右に、僕はまん中で募金箱を首から下げて 
通り過ぎゆく人々の誰かの胸へ、ひとつの声が届くよう 
道化のふりした明るさで、一心に僕は叫ぶ。 

「 赤イ羽根共同募金ノ御協力、オ願イイタシマス 」 
右側に、無数の赤い羽根を手に持て余しながら 
不器用に懸命な声を出す、眼鏡をかけたH君 
(いいねぇいいねぇ、その感じ・・・) 
左側には、旗を握って立っているW君 
弁慶みたいに逞しいけど、声はちょっと小さいね
(もしも疲れてしまったら、時にはちょっくら休もうや・・・) 

「 赤イ羽根共同募金ノ御協力、オ願イイタシマス 」 
僕等3人のコーラスが、世界の何処にも無いような 
独自のリズムで 
地下鉄・戸塚駅構内の改札口から通路迄、響き渡ってゆく 

遠くで切符を1枚買ったおばちゃんが 
流れる人の隙間からこちらを見ては微笑んで 
ゆっくり、歩いて来る。 

がま口から取り出した 
丸い銀貨を1枚 
「おつかれさまねぇ・・・」 


  ちゃりん 


「ありがとうございます」
僕等3人の声を重ねたコーラスが  
日常の虚空を、つらぬいた 





自由詩 赤い羽音共同募金  Copyright 服部 剛 2009-10-02 01:33:27
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