回遊魚シンメトリー
相田 九龍

大きな回遊魚が買い物に来て言う
「服はなるべく大人な方がいい」
静かに掴んだ胸ビレで
僕は世界を辿ってゆく


すべての気泡に魔法のようなメッセージ
色は求めれば彩り 忘れれば朽ち


眠りはやがて訪れ海は深さを増して
僕はどこまで行くのだろう?

ああ いつか僕も水族館の売店で売られたい
具体的な夢の売買に巻き込まれたい




海に終わりなんてなかったんだね
白いオーロラもまた揺らめき続け
僕はそっと掴んだ夢を離せない
永遠は形も変えず目の前で
僕らに挨拶をして通り過ぎていくよ



分かってきたよ
永遠に「さよなら」を言うことはない
分かってきたよ 終わりはない
海にも永遠にも夢にも終わりなんて存在しない


むかし僕らはひとつだった
やがて僕らはひとつになる
そしていつも僕らはひとつなんだ



そんなことを考えてたら
いつの間にか静かに掴んでた手を
離してしまっていて



僕は一人
永遠を彷徨って



ひたすら海が満ちていて
青がどんな色か思い出せなくて
どっちが上かもわからなくて
寝て覚めてもまだ海は深くて
選択肢のない迷宮を
なんと呼べばいいのか


自由詩 回遊魚シンメトリー Copyright 相田 九龍 2009-10-02 00:17:31
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