底無し沼でワルツを
中原 那由多

お互いに危険と快感を欲しがっていたから
何かとよく話すようになったけれど
近頃は足の踏み場を探すようになった
笑えないジョークに相槌を打ちながら
暇潰し程度に逃げ道を作ってみる

本当はこんなにお人好しなんかじゃないのに……


彼女が行く先に私は何となく付いていき
彼女も私が行く先に何となく付いてきた
最低限必要な情報交換から世間話まで
楽しく、時には真面目に語り合っても
恋バナだけは絶対にすることはなかった


根も葉もない噂にぼやきをぶつけて
一瞬、宙に浮いたような気分になったかと思うと
彼女は私に抱きついていた

大好き、なんだとか

もう謝ることができなくて
やるせなさに肩の震えが止まらなかった


来週の日曜日に水族館に行くことになった
イルカショーなんて久しぶり
お弁当も作らなきゃ
今度はちゃんと手を繋ごうね



自由詩 底無し沼でワルツを Copyright 中原 那由多 2009-09-29 17:19:53
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