ふるのぼる
木立 悟








昇る午後の軌跡には
川のかけらが硬くかがやく
何かが水に降りては飛び去り
音や光を底に残す


冬を作り 夜を作り
誰もいない道を去る
朝の雨を見る
昼の霧を見る


陽の底に水があり
その奥に声があり
門と影を去ってゆく
石の街を去ってゆく


夜へ夜へ向かう背に
色と声と火は爆ぜる
夜を成すもの剥がれ飛び
夜のむこうの夜となるとき


降る夜のなかを
降るなかを
何も無い舟が進みゆく
何も無いものを乗せてゆく


梳いても梳いても
花のままにある
哀しみは常に
色も無くある


ふたつの光が互いを消しあい
壁に影を刻んでいる
まばたきより多く
伝わることは少なく


暗い暗い金色の
埃の奥の奥のほうから
うたはひとつとして止まず
昇る翳りを見つめている


























自由詩 ふるのぼる Copyright 木立 悟 2009-09-28 17:50:58
notebook Home 戻る  過去 未来