Eve
within

朝露の滴る草むらに横たわり
私の身体はがらんどうなのに
脈を打っていた
温もりもわからず

コロンカラン コロンカラン

流した涙は
冷たい石のような音を立てて
深い井戸に落ちた


私に父さんはいない
父さんの代わりだったおじさんも
目覚めたら死んでいた


雨の強い日だったので
傘を差して
母さんを探しに出かけた


バス停には 一人の黒髪の少年がいて
彼は私の片腕を盗んでいった

「晴れ間が出てくると、きっと虹が見られるよ」


母さんは私をバラバラに引き裂いた
頭だけになった私は
目をくるくる回しながら、母さんに
「ひとりにだけはしないで」
と懇願したが
私は丘の上の
森の中に埋められた

母さんは私の本当の母さんではなかった


土の中で私は次第に
溶けていった
腐った肉から青い欲望の芽が生え
一本の
酔芙蓉の木となった


夏の頃には
淡いピンク色の花を咲かせ
私は微笑んだ
もし、もう一度
身体が与えられたなら
あの黒髪の少年と
燃えさかる
太陽の下
野花の上を歩きたい



自由詩 Eve Copyright within 2009-09-27 21:23:26
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