トリに私は憧れる
N.K.

ヒトはトリに憧れるが
トリはヒトのことを相手にすることなど断じてないだろう
ヒトは見上げ トリが舞う空に向けて想うのだ 例えば

 A picture ---この言葉を唇に乗せるヒトは、
 「絵画」とか「写真」とかの在る世界の中で
 「絵画」と「写真」の間に渦巻く深淵など
 あっさりと飛び越える 

 傍で見上げる私の目には
 「絵画」は「写真」に憧れ
 「写真」は「絵画」に憧れる

 私は空を映して思うのだ
 ああ、例えばpictureという言葉が私にあれば
 「写真」と「絵画」の裂け目など
 軽やかに飛び越えて
 「絵画」は「写真」と和解をするのに

ヒトはトリに憧れるが
トリはヒトのことを相手にすることなど断じてないだろう
なぜなら
ヒトがバベルの塔を作ろうとした時も 崩れた後でも
トリは言葉なんぞを持たなかったからだ

今日もトリは言葉をもたないだけ
軽やかに 飛んでいくのだ
天と私の間を
 「写真」と「絵画」の間を
 「意味」と「意味」との間を

トリの飛ぶのに不思議はないけれど
そのトリの軽やかさに私は強く憧れる
まるで天国へ憧れるように


自由詩 トリに私は憧れる Copyright N.K. 2009-09-26 16:04:46
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