かわず
葛西曹達

なんとなく泳げるようになって
なんとなく跳ねるようになって
なんとなく鳴けるようになって
なんとなく強気になってみたりして

小さな世界で生きてきたから
小さな生き方しか知らなかった
小さな世界に戻れなくなって
小さな心はさらに縮んだ

知らないことが罪ならば
知ることで償えるのか
弱いことが罪ならば
鍛えることで償えるのか

なんとなく泳げるからって
なんとなく跳ねられるからって
なんとなく鳴けるからって
なんとなく弱気になってしまって

大きな世界に飲み込まれて
大きな壁にぶち当たって
大きな世界のなかでひとり
大きな声は誰にも届かない

選んだ道が罪ならば
引き返して償えるのか
浅はかなのが罪ならば
深く考えて償えるのか

天敵に食べられる危険と
嵐が降りかかる危険を負って
辿り着くべき場所はどこ
巡り会うべき人はだれ

海の中ならきっと自分の
求めるものがあるはずだった
ところがそれは見当たらない
せっかく井戸を這い上がったのに

生きてることが罪ならば
命を絶てば償えるのか
生きてることが罪ならば
さらに生きれば償えないのか


自由詩 かわず Copyright 葛西曹達 2009-09-26 00:04:09
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