銀週
フミタケ


車を走らせていると路面には
頭から脳漿を垂れ流した犬がしんでいるのをよけつつ
あたらしい仕事を探そうかなどと
ニールヤングを聞く
ちょうどいい音楽だ
ちょうどいい音楽なのに
「heart of gold」
なんて言葉を歌う
高校入試対策漢字ドリルをかって
何をつなぎあわせようとしているのだろう
体もつなぎあわせたいのだろうにと
見上げれば今夜は星が綺麗だよ
子供の頃、だだをこねる僕を祖母はおぶって、庭に出てこの星空を見せてくれた
星の瞬きは、僕の目のせいなのかな
流れていくように見えるのは
地球が自転しているからなのか
目が呼吸でもしているからなのかと思いながら
君のいる街の君の部屋の君のベッドまで
すぐに飛んでいけそうな気がしている
首が痛くなるくらい見上げるのは真上で
その視線の先は気が遠くなるくらい誰一人いないさびしい広大な世界で
もし君も同じ星を見上げているとしたら
そこにはどれだけの角度の違いがあるのだろうか
大人になっても何かにだだをこね続けて
先週末のあそこはまるで
虚無をひっくり返したみたいだったけど
それでも僕はまた行くんだろう
僕たちがはじめに出会ったのはあそこなんだし
あのカフェがすべての始まりだった
最低のシルバーウィークを僕たちはすごして
終電後の東京、午前3時の下町を歩き回り
ジャック・ケルアックを思って
恋の徒労には本当にもう何をする気も起きないでいたけど
映画を見たら簡単に勇気がすこしわいたよ
『ワールド・オブ・ライズ』ってリドリースコットのやつさ
世界は嘘のネットの上で成り立ってるのだってかね?
ひどく単純な事におもえてくる
素敵な事も混乱する哀しみも
嘘でもいいから、あの娘に騙してほしい
傷ついてもいいから騙されたいんだ
どうしようもないね
本当にまったく
どうしようもないね
明日は忘れず、CD-Rを買いにいこうと思います。
暇を見て、髪も少し切ろうと思う


自由詩 銀週 Copyright フミタケ 2009-09-24 23:51:54
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