めだかのがっこう
夕凪ここあ

8時35分の朝
○年○組はいつものように
入口も出口もなくなって
わたしたちは起立したまま
おそらく昨日分のあいさつを忘却している

いくつかの数式を
ため息の代わりに吐き出していたので
今朝が何回目のおはようか誰にもわからない
ということを誰も気にしない

ホームルーム
先生は死んだ魚の目をして泡に似たことばを羅列
今日の議題
「わたしのなくしてしまったロッカーの鍵について」
は教科書の
何ページにも書かれてない

整頓された黒板の文字を
メモする前に日直係が端から片付けていく
のを口をあんぐり開けたまま上の空で見てる
先生、
死んだ魚のような目ですか
わたしたちの目は。

教室の底はひどく澱んでいるから
たいせつなものも進行形で
だったものになる
好きな男の子のなまえだったものが
今日にはもう見えない
さようなら

あぁ
わたしたちのあいさつだったものや
好きだった男の子のなまえだったものや
おとこのこだったものを
マーカーしておけば
おはようの母音の発音なんかで
悩むことなんかなかったのに

渦巻いたまんま
どこにも行けない8時35分
みんな
さようならのかたちで
きれいにうずくまってる


自由詩 めだかのがっこう Copyright 夕凪ここあ 2009-09-23 03:21:29
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