おきてがみ
竹節一二三

暗くなるまえにはかえってきます
さがさないでください
            ひふみ

電話のとなりのちいさな紙片にしるし
やわらかな革のサンダルをはいて
砂利をふんだ
わたしはこれからいなくなります

期限つきの家出はいつもたのしい
ポシェットにはハンカチとあめちゃん
536円入ったがまぐち
携帯電話はあえてテレビの上においてきた
いきさきは誰にもつげていない
だから 誰にもあわない

いなくなるまえに
きみにあえばよかった
つかの間の家出でも
すこしだけこわい
ひとつめのあめちゃんをくちに入れ
そのすっぱさに顔がふにゅりとゆがむ
なにを考えていたのか忘れ
電線のうえの青と白をみる
今日の空はせまい

いってきます
鍵をかけて背伸びをひとつ
夏のおわり秋のはじまり
九月はじめての家出


自由詩 おきてがみ Copyright 竹節一二三 2004-09-12 20:40:11
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