はこ
伊織

開けてしまった
くるしい

蓄積したさまざまな理不尽は
皮膚の表面から放出されることなく反射する
何度も
何度も
尾鰭が付いて膨らんでいく
出口を忘れてしまう
体内を回り続ける


「あんたなんか、いらない。」
皆が笑顔で
「あんたなんか、いらない。」
世界から手を振る

ごめんなさい
おいていかないで
練習したんです
瞬足買って
何度も
何度も
けれどどんなに努力しても私の足は50m10秒03だった


なにかいれてください
お金はいりません
なにかを いれてください
その場限りの存在価値

上書きされるでもなく廃棄物として折り重なっていくのに


ああ
この器には余計なものが多すぎるから
ブラックホールができてしまった
薄っぺらな物体の中に
夥しい
私の死体


自由詩 はこ Copyright 伊織 2009-09-22 06:09:27
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