言葉のない世界
ばんざわ くにお

荒々しい岩場がつづくこのあたりには
人の住む気配はない
わずかの食料と水を持って
私はこの世界に逃げてきた

太陽が猛烈に照りつける
灼熱の午後
私は太陽の目を避ける穴を探して
岩場を這いずりまわった

風もなく
物音ひとつしない
ただジリジリと
熱線が大地を焼いている

太陽が地平線に沈んだ夕方
穴から出てみると
太陽と反対側の岩場に
巨大な満月が浮かんでいた

こんな不毛の世界に
廃墟となったレンガ積みの教会を見つけた
崩れかけた内部に入ってみると
十字架を背負ったキリストの彫刻が半分に割れていた

言葉をもとめて
私は逃げてきたが
ここは
言葉のない世界であった


自由詩 言葉のない世界 Copyright ばんざわ くにお 2009-09-22 00:18:56
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