言葉のない世界
ばんざわ くにお
荒々しい岩場がつづくこのあたりには
人の住む気配はない
わずかの食料と水を持って
私はこの世界に逃げてきた
太陽が猛烈に照りつける
灼熱の午後
私は太陽の目を避ける穴を探して
岩場を這いずりまわった
風もなく
物音ひとつしない
ただジリジリと
熱線が大地を焼いている
太陽が地平線に沈んだ夕方
穴から出てみると
太陽と反対側の岩場に
巨大な満月が浮かんでいた
こんな不毛の世界に
廃墟となったレンガ積みの教会を見つけた
崩れかけた内部に入ってみると
十字架を背負ったキリストの彫刻が半分に割れていた
言葉をもとめて
私は逃げてきたが
ここは
言葉のない世界であった