流れるひと
恋月 ぴの

あなたによく似たひとだった

人違いと戸惑うわたしの顔を覗き込み
どうかしたのと気遣ってくれた

これを落としたひとをずっと探しているのと
あなたの落しものを目の前に差し出した

そのひとは、押しいただくようにそれを手に取り
あちこちから眺めてみたり
夕日にかざしてみたり
うんうんと頷きそっと耳に当てた

とても懐かしい音が聴こえる
大切なものだよね
そのひとに必ず逢えることを祈っているよ

ふと目頭熱くなってしまって
流れる涙を拭うわたしの肩に手を添え慰めてくれた

わたし本当にあなたを探しているのだろうか
探す振りをしているだけかもしれないし
この掌の中のもの
確かにあなたの落しものだったのか
いつもあなたはわたしの傍にいてくれるのに
認めたくないだけなのかもしれない

夕日に染まり去っていく後ろ姿を見送りながら
わたしそんなこと見透かされてしまった気がして

ひとり旅をすることの
続けていくことの難しさみたいなものを知る



自由詩 流れるひと Copyright 恋月 ぴの 2009-09-15 09:13:24
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