下町の匂い
加羅

隙間無く並んだ町並み
商店街のアーケード
自転車こいでるお巡りさん
穏やかで愛想のいい
クリーニング屋のおじさん
後ろ手組んで
何かを眺めてるお婆ちゃん
雑多だけど人情が染みる
夕日が斜めに差し込む
ここは下町

突然の訪問に
驚きはするけど
すぐに目を細めて
やぁ元気だったかと
懐かしそうに笑う友
『ちょっと
上がっていきなよ』
昔と変わらない
飾り気の無さが
長く空いてしまった
お互いの時間を
一気に埋める
ひなたい匂いの
僅かに残る部屋が
幼少の記憶を
呼び覚ます
はずむ会話があれば
一杯の茶は
最高のもてなし

別れの時間
なごり惜しい気持ちを
いつとは言えぬ
次の約束に変え
いつまでも手を振り
見送る友
頬を撫でる風が
柔らかく感じた…

心が触れ合う事さえ
少なくなってしまった現代
コンクリートの冷たさに
いつしか馴れてしまって
あなたは大切な事を
何か忘れていませんか?


自由詩 下町の匂い Copyright 加羅 2009-09-14 18:45:12
notebook Home