初秋、夕暮れに
あ。

熱い光はただ重なって
そっと重ねられて


渋滞した道でせわしなく鳴るクラクションも
軽やかに散歩する犬の太くて短い声も
光に飲み込まれてかき混ぜられて
珈琲に落としたミルクみたいにぐるぐると溶ける


繰り返されるいくつもの雑多が
日常と非日常のすき間をうまく通り抜けて
熱に溶かされて陽炎になり、沈んでいくよ


そうやって曖昧になっていくのに
出来た影はやけにくっきりと長く伸びていて
季節の間に作られた壁を見たようで
きみの顔も太陽色に染まっていて


もしも頬に触れたらびっくりするだろうか
繰り返される雑多に同じものは二つとないって
わかっているから確かめたいのに


はらはらと余るほどの美しさは
熱く彩りながら重なっていく
いつまでも重ねられていく



自由詩 初秋、夕暮れに Copyright あ。 2009-09-09 20:28:45
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