ハタチ女の憂鬱
ゆるこ
平日の真昼間からチューハイ片手に地元を闊歩すれば
ご近所さんの白い白い眼差しを否が応でも全身に浴びる
それでも歩いてしまうのは
世界の秘密が知りたいから
ふらふらと歩く私を叱責するものはもうこの世界にはいない
空を見上げれば蜘蛛の巣がきらきらと
鉛雲に照らされて、神社の主になっていた
ゲル状の炭酸水に浮かぶ蟻たちは 浮遊してどんな夢を見るのだろう
さっきから耳元で誰かが何かを祈っている
断片だけうだるような残暑にとろけている
黄色いパッケージの缶を口元に運ぶ
もうだいぶぬるくなってしまった発泡酒は私のアルコール耐性をことごとく表す
なかなかドラマみたいにうまくはいかない
そうやって自転していくのだとはじめて知った
*
神社の境内前の階段で白いスカートを手繰り寄せてどすん、と座る
青々と茂った雑草に軽く嫉妬しながら右手に置き忘れられている自転車を見下ろす
きっと私のような若者がここに来て、蚊の多いこの敷地内で死んだのだろう
ここは静かな自殺場所。そして再生できるサンクチュアリなのだから。
竹林の土木作業員はもくもくと木を切り取っては竹に話しかけていた
小さい声でひそひそと話すものだから両耳をそこにそっと置いていった
豪腕な腕の作業員はひっそりと
女の竹の生理を心配していただけだった
小学生が風ならば私はさしずめ雨水だろうか
どろんどろんにまみれた、衣服を引きずる汚い黄土色だろうか
(ここまで考えたときに気づく)
(きれいなものに例えようとする自分の愚かさに)
踏み切りのカンカンの赤が眩しくて両手で覆った
黄色い発泡酒がきれいに零れて、夕日をはねた
ナメクジの通り道みたいに、それはてらてらと反射して私を憂う
汗でぬめった体を、なんとなく抱いてやった
*
家に着くころには幾分飽和も落ち着いて、いて
私はサンダルを指に引っ掛けて夕日へ投げつけた
鉛色の雲はどこへ飛んだのだろうか
ごうごうと燃える夕日が、心臓を焼いていった