曠野

暗い茂み
あんぐりあいた夜の口
静かに入れば夜の国へとつながっている

夜の国はほんとうの国
隠していたことがはだける
恋人たちは夜の前に身体をさらけ出し
闇の色に溶ける

寂しい者は
思う存分泣いていい国
涙も闇に溶けるから

優しい優しい夜
昼の強い光から隠れていたものたちが
おずおずと姿を見せても
夜空は穏やかな海原
月光は真珠色
彼らの肌は火傷しない

すべてがさらされるので
悪い者たちも踊りはじめる
暗い瞳に黒いステップ
夜の国に入ったら誰しも
暗黒の
真実の
一部として踊らねばならない
月の真珠をたった一つの
なぐさみとして

でも心配はない
朝の国への入り口はもうすぐそこにあいていて
矢のような光に貫かれるのをものともせず
茂みから飛び立った鳥たちが
今日を称える歌を
始めずにはいられない


自由詩Copyright 曠野 2009-09-07 19:57:24
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