無学の飛翔
テシノ

そんなに難しい事でもないんよ
例えば林檎
本当は色がない
ある波長の光を反射して
目が勝手に赤と見るんだ
色彩学な友人がそう言う
私はただうんうんと頷く

そんなに難しい事でもないんよ
例えば体内
真っ暗なのね
一筋の光でも差し込めば
そりゃあんた緊急事態さ
医学部な友人がそう言う
私はただうんうんと頷く

そんなに難しい事でもないんよ
例えば弓矢
これね飛ばない
半分が半分以下略だから
矢は永遠に辿り着かない
哲学徒な友人がそう言う
私はただうんうんと頷く

ただうんうん頷きながら
大変な事になったと焦る

友人達の知識の前に
私の常識は風前の灯
色のない世界の中で
全き闇を一つ抱えて
目指す場所にも着けないなんて

そんなに難しい事でもないんよ
例えばこの蜂
こいつは知らない
力学的に飛べない羽なの
知らずにほら飛んでった
笑って友人達がそう言う
私はただうんうんと頷く
嬉しくてうんうんと頷く


自由詩 無学の飛翔 Copyright テシノ 2009-09-07 10:40:59
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