「柵」(しがらみ)
月乃助


捨てきれぬ
いくじなし
しがらみが 恋瀬の奔流をくじく
あんなにも
四時に 臥所の三方の上 斯界を離れ 
乱れた午後は
広い肩をまるめて
背を向けた

灰蒼色に、空の落ちた緞帳 
窓に白磁の
海峡の山は 銀嶺の夕しぐれ
今日の夢の終わりを演じる
背景の山たち

舞台は、
残照の幕間の藍

四肢の弛緩に 息を潜めて 
第三幕を 戯れに
食指をのばした
海峡の町の
女が

また 
ひとり芝居の 道化を演じ
今は まだ かと
心待ちする
者達に

白粉おしろいの顔に ひとすじ
涙のしずくを 描いて
見せた


自由詩 「柵」(しがらみ) Copyright 月乃助 2009-09-06 02:29:00
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