十戒
ヨルノテガム








  1

海の上の船を歩む
海老の背中に乗って 後ろ向きに逃げる
海の底には 車が待ちつくしている
熱帯魚の群れは 信号で止まり右折する

海面は二階の真下に広がっている
一階はまるで水族館してる
伝わってくるのは サンゴ礁の寝息たち。
窓を開けると 飛び魚がインしてくる

海の都、を潜水して
高速道路はクジラの渋滞、
喫茶「海中」は酸素入りのが何でもウマい
ビキニの人魚が 流通業を営むグループを起こしている


  2

(生ゴミが ぼーっとしてる
(足跡のないおばあさんが笑う
(便所が追いかけてくる

(リンゴが立ち上がって
(アスパラガスが座る
(リンゴが座ると
(アスパラガスが立つ
(腐るまで つづけている


  3

巨大化する鼻の穴A、
鼻の穴B。

どちらかから もうすぐお花畑が見えそう
そこへうつ伏せになって沈みゆく石、赤ちゃんの58番目の苦悩、
眠気がハンパねえ、そして・・・・・
車にウロコが生え 女の皮膚カサカサ、
抱き締めるとすぐ脱皮する、「少女」は
ある方向性を持った生命のベクトル、塊、

Aの行く方は A以外へ
繋がり
Bの行く方は B以外に繋がる、

さよなら、汗をかいている


  4

天に散らばる魂、

時間と存在は

不公平に 縄解ける

白線と白夜、と白い空白、

白々と、百も一も明白に

真っ白を噛み砕く


ナスとキスをする
にんじんとキスをする
ブロッコリーとキスを
さつまいもとだって そして、

食べない
全然、食べない

男と女と宇宙人と、キス。

ごめん、キス。


  5

鼻緒が切れましたワ
素足で歩こう
着物の裾をまくって
細く頼りない足が
こんにちは。を申します
チラチラするから、二本の細足が
角度を替えてチラチラするから
迷って何処かの森で
ジッっと見ていてください

あなたの飼っている不思議なペットが、

鼻緒を食いちぎったペットが、

あなたを丸飲みしてしまう可愛いペットを、

アタシニ、頂戴ナ。


  6

昔々あるところに穴がありました
どこからか が入り口で
どこからか が出口であります
かもしれません
めでたし めでたし

力が入って 力が抜ける
力に力が入って 力に力が抜ける

抜ける力の力に 力が入って
入った力の力が、抜けて、の力に・・・・
の力が・・・・・もういい 入って抜けて・・・
もういい もういい、
もういい、
もういいのです、のですよ


  7

めまい

めまい洩らしちゃうから。

意識が途切れるのはコワイ気がする
歴史なんて意識の継ぎ合わせの総体でしかない

めまい

めまい洩らした跡形。


  8

声。

声をひろう

声。

声がする

声。

声が人である

声。

声が響く

声。

声、無声。


声。
声、無声、受けとる、響く。


  9

シーラカンスちょこちょこする

○×ザウルスちょこちょこする

オバチャン商店街をちょこちょこ、うろうろ

そして扇風機がいつまでも回っていて、

やがて外は雨がしとしと降り出してくる

ようなおはなしが続く。


  十

コレ
星座夜

あれベテルギウス
あれアンタレス
シリウスあれ


本当の名前、ボクだけにアタシだけに

教えてほしいよ
















自由詩 十戒 Copyright ヨルノテガム 2009-09-04 06:28:24
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