まつげ
ゆるこ

目が覚める瞬間の耽美、すなわちそれは曖昧な伏線を凝縮した線路図のようなもの
一連の流れは稚児の指先が母親の元に辿り着く前に行われ、
そのことによって絡めとられた誰かの睫毛は
昨日へ帰るように促し、私は眠る



サボテンの花がまたおおきくなったね
おばあちゃんは笑いながら水をやっている
枯れ果ててどうしようもなくなったヘチマの植木鉢に
延々と、水を食べさせている



昨日帰ったはずの睫毛は今日も、目覚める瞬間の耽美を引き連れて、私を訪ねる
もう、うんざりなんだよと言えば、睫毛のくせにボロボロ泣く
どうしろっていうんだよと言えば、誰かの目もとへと走り出した
私には到底理解できないことが山のようにあるらしい



おばあちゃん、今日は外に出れないから、サボテンに水をあげるの忘れないでね
そういって、すべてを忘れていくドアをゆっくり閉じた
私はジョウロを持てない
おばあちゃんじゃないと、持てない


致死量の言葉を箱詰めにして、睫毛の元へ送った
きっと着払いにしてもあいつは受け取るだろう
そういうやつなのだ、私
あれ、感情がおかしい、おかしい



おばあちゃん、まっしろだね
さむいね
わたしもさむいよ
ものすごく



今朝はすこしだけ寒かった
ぽう、ぽう、と 風が鳴いていて
私はいろいろなことを少しだけ思い出して、眠った
明日は、睫毛は、そこまで来ている、来ているんだ



自由詩 まつげ Copyright ゆるこ 2009-09-03 22:45:11
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