惜夏
ふるる

アイスキャンデーを半分まで食べて
もういらないと感じた

激しい波の音がだんだん遠のいて
かわりに
飾り気のない雲がほそくたなびいてゆく
陸と船をつなぐ白いテープのように

別れ
のことを思う
夏は終わりをすんなり告げる
春も秋も冬もしないそれを

センチメンタルにふさわしい星座が飾ってある
さそりの赤いルビイ
目を凝らせば
星は降るほどあった
夜に
今は虫の歌声がこんこんと沸く

たのもしく背の高い兄だった夜は
だんだんと小さな妹
セピアの靴を履き
音もたてずに夜道を散歩

わたしたちはいつも
夏を引きとめようともがき
ちぎれたテープをもてあまし
ばつの悪い思いをした

そしてそのまま
秋の方を向いた
手を伸ばしてくれるのは当然と思って

手に触れるのはただ
すずしい風だけだったけれど


自由詩 惜夏 Copyright ふるる 2009-09-03 10:18:15
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