惜夏
ふるる
アイスキャンデーを半分まで食べて
もういらないと感じた
激しい波の音がだんだん遠のいて
かわりに
飾り気のない雲がほそくたなびいてゆく
陸と船をつなぐ白いテープのように
別れ
のことを思う
夏は終わりをすんなり告げる
春も秋も冬もしないそれを
センチメンタルにふさわしい星座が飾ってある
さそりの赤いルビイ
目を凝らせば
星は降るほどあった
夜に
今は虫の歌声がこんこんと沸く
たのもしく背の高い兄だった夜は
だんだんと小さな妹
セピアの靴を履き
音もたてずに夜道を散歩
わたしたちはいつも
夏を引きとめようともがき
ちぎれたテープをもてあまし
ばつの悪い思いをした
そしてそのまま
秋の方を向いた
手を伸ばしてくれるのは当然と思って
手に触れるのはただ
すずしい風だけだったけれど