砂の杯
智鶴

乾いた星に目を奪われていた
無機質な感情を夜の闇に纏わせて
空を突き刺す電柱の陰
べたついた空気を振り払えなかった

僕はまだ怯えている
変身していく僕の深層
ガラスを砕くように
崩れ落ちていく世界を空想する
氷のように美しい世界の中
僕はただ馬鹿みたいに
冷たい息で笑い続けることしかできない

例え何もかもを許されても
讃えるものなんて何一つない


破壊衝動と


叫びを


何もない
この空間と僕達の呼吸
必要なものは何もない
残酷な美しさを永遠としたこの世界に
美しいものなんて何一つとして

氷細工が崩れる音と
僕があげた断末魔
意識はもう揺らいでいく

水に映るような曖昧な世界に
砂の器で皮肉な乾杯を


「美しい世界に」


自由詩 砂の杯 Copyright 智鶴 2009-09-03 00:48:14
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