「鱗光」
月乃助


月夜―――――――

はてしない白濁の光海は 東のはてよりのび
波音とともに 広がりやってくる

足裏に 触れる
コンクリートの
白を重ねた石英の ざらめく 

陸の消え去った 突き出る瓦礫の遺跡の群れに
静かな肩より 夜をぬぎすて
波がしらのうたう 月明かりに
けもののように
白い脚でたたずむ

水面に突き出るビルの
割れた警告灯の赤い影

とめどなく やまず よせる
波打ち際の その先から 冷たく/ぬるく
ヒレをちぎったような 足指でふれてみる海

肌の 一片 一片と
鱗に変わっていった 第五間氷期の始まり
抜け出そうと 生き残れと
淘汰に身をまかせ
あらゆる 生き物達が海へ回帰していった
魚族のあたしが、ずっと昔
人間であった そんな幻想がもたらした
一つの 海原風景



自由詩 「鱗光」 Copyright 月乃助 2009-09-01 13:59:28
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